エアコンガイド編集事務局
賃貸のエアコンクリーニング代は、普通に使ってついた汚れなら大家さん側の負担が妥当だと、国土交通省の資料に示されています。ただし清掃について特別な取り決め(特約)があるとその扱いは動くため、開くのは契約書の2つの欄です。
- 普通に使ってついた汚れのクリーニング代は、国の指針でどちら側の負担とされているか
- 契約書で開く2つの欄の名前と、そこで探す言葉
- 退去時に請求されたら、請求書と契約書のどこを見比べるか
- 自分で頼むことになるのは、どういうエアコンのときか
国土交通省の資料と契約書のひな形は、公開されているPDFの原本を開いて確かめました(2026年8月8日)。
退去後に請求書を受け取っている方は、「退去時にクリーニング代を請求されたら、契約書の2つの欄を先に開きます」の章へ進んでください。
賃貸のエアコンクリーニング代は、国の指針では大家さん負担が妥当とされています
国土交通省の原状回復ガイドラインは、エアコンの内部洗浄を「賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの」という区分に置いています。退去のときに元の状態へ戻す費用を、部位ごとにどちら側が負担するかを定めた指針です。
資料の中の「賃借人」は入居している側、「賃貸人」は大家さんを指します。
該当する行の「考え方」欄には、こう書かれています。
(考え方)喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えているので、賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。
(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年(2011年)8月・別表1 P.21)
同じガイドラインの別表3「契約書に添付する原状回復の条件に関する様式」でも、賃貸人の負担となるものの列に「2.エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)」と書かれています。
ただし、このガイドライン自体の位置づけについて、国土交通省は別の資料でこう書いています。
ガイドラインは、原状回復の費用負担等のあり方等について、トラブルの未然防止の観点から現時点において妥当と考えられる一般的な基準をとりまとめたものです。使用を強制するものではなく、原状回復の内容、方法等については、最終的には契約内容、物件の使用の状況等によって、個別に判断、決定されるべきものであると考えられます。
(出典:国土交通省住宅局参事官「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に関する参考資料」令和5年3月・P.2)
ガイドラインが示しているのは原則で、契約に清掃の特約があれば扱いが動きます。
なお、エアコンが動かない、冷えない、水が垂れているといったときは、クリーニング代ではなく修理費の話になります。その場合の負担は賃貸のエアコンが壊れたときの費用と家賃の扱いで書いています。
もともと部屋に付いていたエアコンは、大家さんの所有物です。
普通に使ってついた汚れは、条文が原状回復の義務から外しています
退去するときに元の状態へ戻す義務の範囲は、民法621条が定めています。条文は、その義務からある範囲を明確に外しています。長い条文ですが、目を留めるのはカッコの中の2つの言葉です。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(出典:e-Gov法令検索 民法第621条・賃借人の原状回復義務)
カッコの中にある「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗」と「賃借物の経年変化」が、外されている部分です。冷暖房を普通に使って内部に汚れがたまることを大家さん側の負担に置いたのが、先に引いた考え方欄です。
喫煙などによる臭いが付いていると、大家さん負担の前提から外れます
考え方欄には「喫煙等による臭い等が付着していない限り」という条件が付いています。タバコのヤニなど、臭いが室内に付着している場合は、この条件のほうに当てはまります。したがって内部洗浄が大家さん負担にあたるという前提から外れます。
臭いに心当たりがあるときは、請求書に何の作業として書かれているかを控えておきます。
契約書で探す語は「エアコン」ではなく「冷暖房設備」です
賃貸住宅標準契約書でエアコンにあたる行の名前は「冷暖房設備」で、契約書の1枚目にあります。エアコンガイド編集事務局が国土交通省の原本を開いて確かめました(2026年8月8日)。
その行が並んでいるのが、契約書の1枚目にあたる頭書(かしらがき)の「設備等」という欄です。トイレ、浴室、給湯設備、備え付け照明設備などと同じ並びに置かれ、備え付けがあるかどうかを記入する形式になっています。
契約書で開く2つの欄
| 開く欄 | 探す語 | そこで分かること |
|---|---|---|
| 頭書(1)の「設備等」 | 冷暖房設備 | そのエアコンがもともと部屋に付いていた設備として貸されているか |
| 別表第5(第15条関係)の「Ⅱ 例外としての特約」 | 清掃/クリーニング | 原則が動く記載があるか |
(出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書」平成30年3月版)
賃貸の契約書を「エアコン」という語で探しても、その行は出てきません。書類の上では冷暖房のための設備というくくりで扱われるため、探す語がずれていると、あるはずの記載を通り過ぎます。
ただし、標準契約書は国が示しているひな形で、不動産会社ごとに見た目や欄の並びが違います。
別表第5は契約書のうしろに並ぶ別表のひとつで、標準契約書では【原状回復の条件について】という見出しから始まります。この名前の別紙が付いていない契約書では、同じ内容が末尾の特約の条項に置かれていることがあります。探す語はどちらも「清掃」「クリーニング」です。手元に契約書が見つからないときは、管理会社に写しを求めます。
契約書の先頭にある頭書で、「冷暖房設備」の行を探してください。
クリーニング代の負担が変わるのは、契約書の「例外としての特約」の欄です
国土交通省の参考資料(令和5年3月)には、令和4年のアンケートで実務で締結されることが多い特約として、ハウスクリーニング特約とエアコンクリーニング特約が挙がったと記載されています(P.8)。標準契約書では、こうした取り決めが置かれる欄の名前が「別表第5(第15条関係)」の中の「Ⅱ 例外としての特約」です。
この別表第5の中に「エアコン」という語は出てきません。そのため、エアコンのクリーニング代がどちら側の負担になるかは、この欄と、先に引いた指針の別表1(P.21)の2つを並べて読みます。
「エアコンクリーニング特約」は、国の資料に名前で挙げられています
エアコンクリーニング特約は、参考資料のP.8に、この名前のまま載っています。同じP.8には、ハウスクリーニング特約について、部屋の広さや間取りに応じて定額の費用を負担する内容になっていることが多い、とも書かれています。
特約の欄に清掃の記載を見つけたときは、その記載が部屋全体の清掃を指すのか、エアコンの洗浄を指すのかを確かめます。
確かめるのは、特約の金額と条件が契約のときに示されていたかです
入居している側に特別の負担を課す特約が有効に成立するための要件は、同じ参考資料のP.8からP.9に3つ記載されています。自分の契約がそれに当たるかは、特約に書かれた内容と、契約のときにその内容が示されていたかで見分けます。
契約書の特約の欄に清掃の記載があった場合は、そこに書かれた作業の範囲と金額を書き写しておきます。
退去時にクリーニング代を請求されたら、契約書の2つの欄を先に開きます
請求された金額を払う義務があるかは、契約書の「例外としての特約」の欄に清掃費の記載があるかどうかで扱いが変わります。
請求書や精算書を受け取ったあとに調べたくなるのは、たいてい金額のほうです。ただ、その金額が高いか安いかを考える前に、請求の根拠が契約書のどこにあるのかを先に見ます。
開くのは、賃貸の契約書の次の2か所です。
- 頭書(1)の「設備等」 — 部屋の設備として貸されていたか
- 別表第5の「Ⅱ 例外としての特約」 — 清掃の記載があるか
退去日が決まった段階なら、立ち会いの前に開いておきます。請求書が届いてから開く場合も、見る欄は同じです。
請求書では、エアコンの内部洗浄として書かれているかを見ます
請求書には、部屋全体のハウスクリーニングという1行に含まれている場合と、エアコンの内部洗浄として項目が別に立っている場合があります。請求書がどちらの形になっているかを見てから、契約書の対応する記載を探します。
項目名が「クリーニング」だけで作業の中身が読み取れないときは、何の作業に対する請求なのかを管理会社に確認します。
契約書に清掃の記載がなければ、大家さん負担が妥当という原則の側に戻ります
特約の欄に清掃の記載が見つからなかった場合、戻る先は原則の側です。エアコンの内部洗浄は、指針の別表1で、入居している側が普通に住んで使っていても発生するものとして挙げられている項目です。喫煙などによる臭いが付いていないなら、この項目に当たります。
原状回復の費用負担について話が進まないときは、消費者ホットライン(188)や消費生活センターに相談できます。
請求書に書かれた作業の名前と、契約書の特約の欄の文面を、同じ紙の上に並べて突き合わせます。
入居した日から臭っていたときは、その時点の状態を写真で残します
入居した日からすでに臭っていた場合、その汚れがいつから付いていたのかを後から示す材料になるのは、入居した時点の記録です。
入居した直後に、吹き出し口や送風口まわりの状態を写真に撮っておきます。管理会社へ連絡するときは、いつから臭うのかを一緒に伝えます。
自分で触れる範囲はフィルターまでです。その先はエアコン掃除を自分でやる範囲にあります。
写真は撮影日が分かる形で残します。
もともと部屋に付いていたエアコンでないときは、自分で頼むことになります
さきほどの「設備等」の欄に冷暖房設備の記載がないエアコンは、部屋の設備として貸されたものではありません。前の入居者が置いていったものや、自分で買って取り付けたものがこれにあたります。
では、そのエアコンのクリーニング代はどちらの話になるのか。設備として貸されていないぶん、洗浄を頼むかどうかも費用も自分で決めます。
自分で頼むときも、先に管理会社か大家さんへ一言入れます。管理会社から「自分で手配してください」と言われたときも同じ順番です。理由はエアコンクリーニングの頼み方に書きました。
かかる金額の目安は1台あたりの支払総額の目安にまとめています。
ユアマイスターは、故障や破損があったときの補償を「最高100万円まで」と公式サイトに書いています(2026年8月4日確認)。作業を任せる前に読めるのは、この記載と洗浄プランの一覧です。
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賃貸のエアコンクリーニングでよくある質問
- エアコンクリーニング特約があると、退去のときに必ず払うことになりますか?
-
国の資料では、①特約の必要性があり、暴利的でないなどの合理的な理由があること ②通常の原状回復を超える義務を負うことを認識していたこと ③その義務を負う意思を示していたこと——の3点が、特約が有効に成立するための要件として整理されています(令和5年3月・P.8〜9)。特約の記載があった場合は、そこに書かれた作業の範囲がエアコンの内部洗浄を含む記載なのかを、契約書の文面から読み取ります。
- フィルターを掃除していませんでした。それを理由に負担を求められますか?
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賃貸住宅標準契約書の別表第5では、清掃費が入居している側の負担になるのは通常の清掃を実施していない場合とされ、その範囲は部位または住戸全体の清掃費用相当分と書かれています。エアコンの内部洗浄は、指針の別表1で別の項目として扱われています。
- 退去後の精算書で、エアコンクリーニング代が敷金から引かれていました。何を確かめればいいですか?
-
敷金から引かれていた場合も、見る欄は請求書のときと同じです。引かれた項目が何の作業として書かれているかを、契約書の「Ⅱ 例外としての特約」の欄の文面と照らします。
まとめ 契約書で開くのは「設備等」と「例外としての特約」の欄です
国土交通省の原状回復ガイドラインでは、エアコンの内部洗浄は、喫煙などによる臭いが付いていない限り大家さん側の負担とすることが妥当と考えられる、と示されています(別表1 P.21)。
賃貸の契約書で原則が動く取り決めが置かれる場所が、別表第5の「Ⅱ 例外としての特約」の欄です。退去のときに請求されたら、請求書の作業名とこの欄の文面を見比べます。
もともと部屋に付いていたエアコンで、特約の欄に清掃の記載がなく、たばこなどの臭いも付いていないなら、原則の側にあたります。
自分で頼むと決まったあと、どこに頼むかを比べる段階の話はどこに頼むかを比べた記事にまとめています。
契約書のこの2つの欄に付箋を貼って、管理会社へ連絡する前に手元に置いてください。
参考にした資料
いずれも2026年8月8日に原本のPDFで確認しました。
- 民法第621条(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年8月(別表1は21ページ)
- 国土交通省住宅局参事官「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に関する参考資料」令和5年3月
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」平成30年3月版
